■原作本
写真詩集 「希望の木」
著者/新井満 出版/大和出版
あの大津波の中でたった一本残った松。
『千の風になって』の著者が、失意の底からの希望と再生を、いのちの絆を紡いだ感涙の写真詩集。
2011年11月、NHK「ラジオ深夜便」で作家・新井満氏が朗読し反響を呼んだ詩「希望の木」は、同年写真詩集として刊行されました。 その後、新井満氏は各地で朗読会を行い、多くの人の感動を得ています。
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わたしは、松の木です。
海辺に、一本だけ生えている松の木です。
でも、ついこのあいだまでは、たくさんの仲間たちと一緒でした。
日本の東北地方、岩手県は陸前高田市。
太平洋に面した海岸には、それは見事な緑の松林が、弓形につづいていました。
その名も、“高田松原”。
松の木の本数は、七万本。
植林が始まったのは、今から三百五十年も昔。江戸時代初期のことでした。
そんな大きな松林が、今ではどこにも見当たらないのです。
この世からあとかたもなく消えてしまったのです。わたしひとりだけを残して・・・。
「おーい!」
「だれかいませんかー!」
「父さーん!」
「母さーん!」
兄さんや姉さんたち…。多くの友人や知人たち…。
あなたたちはいったいどこへ行ってしまったのですか?
声が嗄れるまで叫びつづけました。でも、どこからもだれからも返事はないのです。
わたしは松の木です。
海辺に、一本だけ生えている松の木です。
わたしは、ひとりぼっちです。
とても淋しいです。
泣かない日は、一日もありません。
(本文より一部抜粋)
■著者
作家、作詩作曲家、画家、写真家、長野冬季オリンピック開閉会式イメージ監督など、多方面で活躍中。
1946年新潟市生まれ。上智大学法学部を卒業後、電通に入社。在職中はチーフプロデューサーをつとめた。
小説家としては1988年『尋ね人の時間』(文藝春秋)で芥川賞を受賞。
2003年11月に発表した写真詩集『千の風になって』(講談社、朝日新聞出版)と、それに曲を付け自ら歌唱したCD『千の風になって』(ポニーキャニオン)は現在もロングセラーを続けている。
著書、CD多数。近著に『希望の木』(大和出版)、『自由訳 方丈記』(デコ)、『なぜ生まれてきたのか』(海竜社)、『神様のシンフォニー』(講談社)。
アニメーション映画「」希望の木」では脚本・音楽を手掛ける。
新井 満氏のホームページはこちら【マンダーランド通信】
新井満「希望の木」朗読(山本二三の絵をスライド上映)
2013年2/19@東放学園
新井満 × 山本二三「希望の木」対談
2013年2/19@東放学園